ふつうのくらしマガジン企業新しい働き方

社会課題解決の中に次のビジネスのヒントはある(前編)

地域でITを活用した「未来つくり」を実践する、株式会社ダンクソフトの取り組み

ダンクソフト社、星野社長
「GDPではない豊かさを模索している今の時代には、社会課題解決の中にビジネスチャンスがあると思う」と語る社長の 星野氏

非正規職の女性に限らず、低年収や低年金から、将来を不安に思う声は世間に多く見られます。そんな中、複数の働き口から収入を得る「複業」や「小商い」をすることで、明るい未来を得ようという機運も高まってきています。今回は、地方でライターを育成し、主に女性たちにITを活用した雇用を生み出している、未来をつくる学びである「プロライター育成講座」に注目し、その実践企業にお話を伺いました。

様々な人たちが協働してプロライター育成講座が誕生

――御社が各地で実施された「プロライター育成講座」は、細切れの時間を活かし、場所の制約も少なく働けるため、苦しい生活をしている女性にも大変需要がありそうです。ぜひ詳しく教えていただけないでしょうか?

星野(敬称略、以下同):前提からお話しすると、まず弊社は震災をきっかけに、本社機能を分散させ、サテライトオフィス(*)を探すようになりました。そんな中、ケーブルテレビの網が全県に巡らされていて、インターネット環境がとても良い徳島県に注目しました。たまたま、徳島で仕事をしたいエンジニアの方ともご縁があり、徳島市や神山町にサテライトオフィスを作りました。神山町は今サテライトオフィスの集まる町として全国的に有名になっています。

*本社・本部から離れた所に設置されたオフィスのこと

星野:その後、同じ徳島県の阿南市から弊社に「サテライトオフィスオフィスを作りたい」との打診がありました。同じようなタイミングで、Webライティング事業で産経新聞社の関連会社の産経編集センターと、多くのデザイナーやライターと協力して制作業務に携わる「クリエイタープラットフォーム事業」を推進するクリエイターズマッチが業務提携をしていました。

プロライター育成講座の仕組み(提供:株式会社ダンクソフト)

星野:しかしライター人数が足りず、サテライトオフィスを地方に展開する弊社に相談がありました。そこでライター育成カリキュラムを提供できるイシス編集学校を運営する編集工学研究所と弊社も入れた4社で「プロライター育成講座」を運営することになりました。

――いろいろな方のご縁がつがなり、協働されたのですね。

必要ソフトはメモ帳だけ、参加のハードルはとても低い

――IT系のスキルがいろいろある中で、なぜライティングの講座に注目されたのでしょうか。

星野:インターネットで広告が配信されるようになり、様々なターゲットにあわせた広告の配信が求められています。一つの宣伝に10パターンぐらいの文章が必要になるのですが、その供給が追いついていません。一方で、雇用を創出したいと思っても、プログラマーやWEBデザイナーを養成するのには時間がかかってしまいます。「もう少し参入障壁が低いところを」と模索する中でこの形に落ち着きました。本講座では、テキスト広告(*)の文章が書けることを目指します。この場合、必要ソフトもメモ帳だけで、特別なスキルも必要ありません。

*インターネット広告のうち、文字だけで表現する広告のこと

――メモ帳だけでいいのですか!それですと、受講者側の初期投資も少なくてすみそうです。

衣笠:はい、パソコンはご家庭でお持ちのパソコン、インターネット環境もご家庭のネットワークをご利用いただいていているので、受講生の方が初めに必要なものは大変少なくなっています。

プロライター育成講座のカリキュラムについて説明する広報の衣笠氏

――プロライター養成講座の具体的なカリキュラムについて教えてください。

衣笠:まず一日、集合で研修を行います。その後はイシス編集学校のE-ラーニングシステムを利用して、約30日の研修を受けていただきます。研修修了時にライターとして認定されると、実際に仕事をしていただけるようになります。最初はテキスト広告を作成いただきますが、徐々にスキルアップされて長文の広告記事も書く仕事も予定しています。

――講座では受講料がかかりますか?

衣笠:ライター認定を受けるための研修の受講は30,000円です。ただし、受講後のお仕事でそれをペイしていただける仕組みにはなっています。

参加者の9割は女性、7回の開催で63人が集まった

――一度集合研修の様子を拝見したことがありますが、参加者はほとんど女性のようでした。

衣笠:募集の段階では開催する自治体の市内に住んでいる方としていますが、実際には9割程度が女性です。年齢は20代~60代と幅広いですが、コアな層は30~40代です。

星野:地方では男性の雇用が比較的安定していることが背景にあると思います。逆に、女性のできる仕事が少ない。男性は、60代になり引退をされてから講座を受講される方が多いという印象です。

プロライター育成講座、集合研修の様子 (提供:ダンクソフト社)

――たくさん稼げる仕事ではない、けれども働きたいという方の需要をつかんだのですね。実際に、これまで何名程度の方が受講して、何割程度の方が修了されましたか?

衣笠:徳島県、北海道、山口県で合計7回実施をして、63名の方が集合研修に参加しています。その中からライター認定を受けたのは2割程度です。少ないようにも見えますが、情報を受け取って、編集して、読み手が関心を持つように書き上げるという一連の作業が、構造的に理解できる人とそうでない人がいて、このような数値となっています。

衣笠:ただし、ライター認定がされなかった方にも「研修課題の回答をもとに、よかった点はここで、今後このような点を伸ばしていけばより良いと思います」ということをフィードバックしているので、皆さまに受講してよかったといっていただけるプログラムになっています。

――後編へ続く