ふつうのくらしマガジン企業新しい働き方

今まで見向きもされなかった人材の中にも光る原石はたくさんいる

既存の採用スタイルに疑問を持った私が、ナイトワーク女性の昼職転職サイトを運営する理由

――株式会社ゼロベータ 日詰宣仁氏インタビュー

株式会社ゼロベータ代表取締役の日詰氏、取締役の坂井氏
株式会社ゼロベータ代表取締役の日詰氏、取締役の坂井氏

非正規シングル女性の中には、所得の少なさをキャバクラや風俗などの夜の仕事で補いながら暮らしている人もいます。
夜の仕事は女性たちにとって時に「誰にも言えない秘密」を抱えることとなり、女性たちの自己肯定感にネガティブな影響を与えることもあります。

そんな中、ナイトワーク女性を採用したい企業と女性とをつなぐWEBサイトの存在を知り、その運営会社に取材を申し込みました。
一見、採用において「不利」に見える女性をなぜ応援するのか。その理由を代表取締役の日詰宣仁氏に尋ねました。

様々なご縁や偶然が重なり、ナイトワーク女性の昼職転職サイトを運営しています

――本日はお時間を頂き、ありがとうございました。御社のナイトワーク女性の昼職(*1)転職応援サイトは、一見雇用に結びつきにくい女性を応援しているという点で、とても興味をひかれました。なぜ、ナイトワーク女性の昼職転職サービスをしようと思われたのでしょうか?

日詰(敬称略、以下同):私はもともとアパレル業界で店長をしていたのですが、その企業の中で定められていた採用のプロセスに疑問を持っていました。その後、IT系のベンチャー企業への転職をして、アメリカの採用サイト等に触れる中で、様々な形の採用方法があることを知りました。

そして、知人がスナックをしていたご縁があり、ナイトワークの女性たちがプロフィールを登録して、そこにお店側がアプローチをかけるサイトを作りました。そこから、市場のニーズとの調整をはかる中で生まれたのが、現在の「マツクルワークス」です。

――では、ナイトワーク女性の転職支援サービスを始めたのは、様々なご縁が重なってのことだったのですね。

日詰:まったくの偶然です。

*1 「ナイトワーク」に対する昼間時間帯の「一般的」な仕事のこと

話をする日詰氏と坂井氏
話をする日詰氏と坂井氏

夜の仕事のことを言っても良いのか、履歴書に何を書いたら良いのかが分からない

――マツクルワークスを通じて転職活動をする女性たちのニーズは何なのでしょうか?

日詰:ナイトワークの世界は年齢とともに稼げなくなり、20代前半がピークでその後は収入が下がっていくばかりです。そんな中で、将来このままでいいのだろうか?そろそろ昼職をしないとまずいのではないだろうか?という思いが強くなってきます。

しかし、女性たちは履歴書に夜の仕事のことを書いていいのか、面接で言っても良いのか分からない。また、高卒と中卒の方でおよそ7割を占めるのですが、そうすると20代の半ばで履歴書に6年程度のブランクができてしまう。これは大きいです。そのため「ナイトワーク女性でも大丈夫」といっている求人サイトへの需要は高いです。

マツクルワークスサイトの画面
マツクルワークスサイトの画面。LINEで友達登録も可能

――ありがとうございます。実際に女性たちが御社のサイトに登録をしてから転職を決めるまでの流れを教えてください。

日詰:まず、サイトに掲載の求人をクリックすると出てくる「お問い合わせフォーム」からご連絡をいただきます。その後は、ライン等で連絡をし、お茶を飲みながら数回の面談を通じて企業との面接につなげます。そしてご縁があれば採用に至ります。

これまで培ってきたスキルを、営業職で活かす女性たちが多いです

――女性たちはどんな仕事に就きたいと思っているのでしょうか?

日詰:最初は受付や秘書、事務などをやりたいという女性が多いです。ただ、本人の希望をよくよく聞いてみると、これまで月に50万~60万円を稼いでいる女性もいますから、お給料が減り、生活水準を急に下げるのは難しい。また、人と話すのが大好きという子が多いので、粛々と作業をするタイプの事務職は向かない。結果的に営業に決定する女性が多いです。

――就職をする上での女性たちの強みは何ですか?

日詰:コミュニケーション能力が高いことです。これは圧倒的な強みです。楽しく会話をすることで5~6年生き延びてきた女性が多いですから。また、セクハラにも強い(苦笑)。一般の女性なら深刻に受け止めてしまうことも、さらっと流せます。もちろん、セクハラをするような方には改めていただかないといけないですが。

――それはすごい強みですね。これまでの一番の転職成功エピソードにはどんなものがありますか?

日詰:就職ではなく業務請負での就労になるのですが…。いわゆる「モテない男性」のトレーニングを行う学校があり、そこの「校長先生」として就任した女性がいます。いろいろな男性を見てきていますから、どうしたら女の子に喜ばれるかとか、どのような行動はNGかなどの知識が豊富で、現在ナイトワークをしていた時並みかそれ以上の収入を得ていると思います。

構造的に株式会社の枠組みではサポートできない女性もいる。そこは非営利団体の出番。

――逆に、苦労をしたエピソードはありますか?

日詰:すべての方がそうというわけではないのですが、風俗出身の女性は苦労をすることがあります。会話を盛り上げることが苦手で風俗嬢になったという方もいますので。そのような場合で、メンタル面での困難を抱えていたりすると、地道な就労のトレーニングが必要です。

NPO法人の「Grow As People」さんなどは時間をかけて、インターンシップやボランティアを通じたトレーニングを行い就労につなげています。

私たちの側でそのような女性の支援はできないのかというと、構造的に株式会社の形態で行っていくのは難しいと思っています。

社内に張り出していある転職女性の写真
社内には転職に成功した女性たちの情報が所狭しと張り出してある

人と違った背景を持つ人でも、会社全体で歓迎をする体制が大切

――ありがとうございます。支援をする側も、できること・できないことを見極めてネットワークを作り対応することが必要ですね。女性が就職する企業の方が採用にあたり心配することはありませんか?

日詰:まずは、パソコン操作ができるかどうかということを心配されます。もちろんさわれる方もいますし、習得への素直さもあります。また、それを補って余りあるコミュニケーション能力があります。

また、すぐ辞めてしまわないだろうかという心配もあります。現在、3か月以内の離職率は一般の求人サイトより少し高いぐらいなのですが…、これは採用される先の企業の方にも一部原因があるかとも思います。私たちは女性たちが夜の仕事をしていることを隠さないで転職ができる企業の方とお付き合いをさせていただいているのですが、会社全体でそのような女性をウェルカムする仕組みを作らないといけないです。社長だけが歓迎するのでは難しいです。

ユニクロでは店舗に必ず一人障害を持った方が働いているのですが、それはとてもいい取り組みだと思うのですね。その方がいることが前提で店舗のシステムが回りますので。ナイトワークの女性は障害を持っているわけではいのですが、そのような視点が重要だと思います。

正社員・フルコミット・起業。いろいろな働き方を応援していきたい。

―今後、御社としてはどのような方向を目指されたいとお考えですか?

日詰:夜の世界の人材総合会社になりたいです。マツクルワークスを起点に、基本的には正社員の仕事を紹介する。もう一つはフルコミットの働き方です。生保レディーなどの働き方がこれにあたると思います。そしてもう一つが起業・独立ですね。

夜の世界の女性にはシングルマザーが一定数います。お子さんがいると残業ができない。だからといって事務スキルが高いわけではないので、派遣社員にはなれない。そんな中で一つ解決策があるとすれば、フルコミットで営業職をするというのがあると思います。

結果さえ出していればどれだけ働こうか休もうか自由ですという働き方です。商材を販売してほしいという企業はたくさんあるので、いま商材を販売してほしい会社と、フルコミットの仕事をしたい女性のための求人サイトも作りたいと思っています。

ホワイトボードに書きながら将来のビジョンを語る日詰氏
人材の総合会社を目指していきたいんです

そしてもう一つは独立です。20人か30人に一人は、自分でなにか独立してやりたいという人もいると思うんです。個人的には女性はなにか新しいことをやることに長けていると思います。LINEでもInstagramでも、流行らせたのはみんな女性です。自分の得意を活かして女性が起業している例はたくさんありますので、そこに対して出資もしたいと思っています。

こうして、マツクルワークスを起点に、正社員とフルコミット、そして独立・起業も応援する。さらに事務スキルやマナー、メイクやその他のスキルアップもサポートする。こうして夜の世界の人材総合会社を目指していきたいと思っています。

今はパラレルキャリアといわれますが、正社員の仕事に就くのがゴールとは、僕はまったく思っていません。フリーランスを2つやってもいいですし、週4で正社員をやって週2で複業をやるのでも良い。というよりも、世の中がそのようになっていくと思うんです。

正社員の仕事に就くのがゴールとは思っていませんと語る日詰氏
正社員の仕事に就くのがゴールとは思っていません

今まで見向きもされなかった光る原石を、育てていく企業が今後生き残っていくと思う

――最後に、今後ナイトワークの女性の採用を考えている企業の方へのメッセージをお願いいたします。

日詰:少しでも興味があればお気軽にお問い合わせくださいということでしょうか。誰でも欲しがるようなハイスペック人材を追い求めるのは疲弊するだけです。学歴とか職歴とか今まで見向きもされなかった人材の中にもきらりと光るものを持った原石はごろごろいると思います。これだけ人手不足が言われている世の中ですので、そういった人材を育てていける企業だけがこれから生き残っていけると思います。

そういった意味で、ナイトワークの女性にはダイヤの原石がたくさんいると思っています。たくさんの会社の役員クラスの方と毎日のように飲み交わしてきていますので。今まで埋もれていたそのような事実に目を向けませんか、とは思っています。そういった認識が広がれば「夜の仕事をしていた」というのは女性にとってもブランドになると思います。

――企業の人手不足解消や女性たちの生きやすさの面で大切な示唆をいただきました。本日はお時間をいただき、ありがとうございました。

ミーティングスペースにて話しをする日詰氏とスタッフ
ミーティングスペースにて話しをする日詰氏とスタッフ

夜の仕事をしている女性たちの強みはコミュニケーション能力である――。
そう断言し、女性だけでなく社会の方も変わっていくべきと語る、
そんな日詰氏の視点にスタッフも心打たれた1時間半でした。

社会の認識が変わっていくことで
「”夜の仕事をしていた”というのは女性にとってもブランドになる」
そんな、日詰氏の語る社会が実現することを
私たちも応援していきたいです。

*企業情報*
株式会社ゼロベータ
ADRESS: 東京都新宿区西新宿7-17-14 405
TEL: 03-6908-6388
E-mail: info@zer0beta.jp

▶ナイトワーク女性の昼職転職サイト、マツクルワークスはこちら